2.左半分、全く動かなくなった
- 原因不明のめまいが続いていた横浜市の本間京子さん(62)
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原因不明のめまいが続いていた横浜市の本間京子さん(62)は2008年9月、顔の左半分に違和感を持った。
左耳の周辺に発疹があり、市内の西横浜国際総合病院で「ラムゼイ・ハント症候群」と診断された。水疱瘡(みずぼうそう)の原因となる帯状疱疹(ほうしん)ヘルペスウイルスが顔面神経を侵すために起こる病気だった。
疲れやストレスを引き金に、体内に潜んでいたウイルスが再活性化したようだった。
顔のまひ、耳の周囲の帯状疱疹、めまいや耳鳴り・難聴が主症状とされるが、三つそろわない例や発疹がわかりづらい例、症状が出るのに時間差が ある例も多く、診断は難しい。
京子さんも、顔のまひに先行してめまいが現れ、発疹は遅れて見つかった。
耳鼻咽喉(いんこう)科の稲葉鋭部長(51)=当時=は片目ずつつぶれるか、口をへの字にできるかなど10項目について顔の動きを調べた。
40点中4点。左はかろうじて目を軽く閉じられる程度で「完全まひ」と呼ばれる状態だった。聴力検査をすると、左耳はほとんど聞こえなくなっていた。めまいがひどく、京子さんは診察台に座っていることができなかった。
再びコンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴断層撮影(MRI)の検査をし、脳卒中などのほかの病気がないことを確認した。
このウイルスの特定には約2週間かかる。だが、結果を待っているうちに症状が進む心配があった。増殖を抑える抗ウイルス薬の点滴と飲み薬による治療が、すぐに始まった。
通常は、神経の炎症やむくみを引かせるためにステロイドも併用する。ただ、京子さんは不安や気持ちの落ち込みが激しく、副作用の抑うつが懸念された。最初はステロイドを使わず、めまいを抑える薬、代謝や血液の循環を良くする薬、ビタミン剤などを飲んだ。
吐き気もあり、口からほとんど食べられなかったので、点滴で栄養を補給した。体重が10キロ近く減った。少しでも食欲が出るように、夫の実さん(66)は毎日、京子さんの好きなパンや果物を持って病院に来た。
顔の筋肉が固まるのを防ぐため、ベッドに寝たまま、看護師が顔をマッサージしてくれた。めまいが少し良くなると、車いすで、次は点滴台で体を支えて歩いて、リハビリルームまで行き、マッサージを学んだ。
交感神経の働きを休める星状神経節ブロックや、電気刺激を受けた。ステロイドも少し使った。月末に退院。通院治療に移った。
(2010年4月28日付 朝日新聞朝刊から)
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