耳・鼻・のど顔面まひ

耳・鼻・のど顔面まひ

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6.情報編 早期に治療を

顔の側面には顔面神経が走っていて、表情や涙・唾液(だえき)の分泌、味覚などにかかわっている=図 顔の側面には顔面神経が走っていて、表情や涙・唾液(だえき)の分泌、味覚などにかかわっている=図

顔の側面には顔面神経が走っていて、表情や涙・唾液(だえき)の分泌、味覚などにかかわっている=図。

「ラムゼイ・ハント症候群」は、水疱瘡(みずぼうそう)にかかった後、顔面神経の中に潜んでいた帯状疱疹(ほうしん)ヘルペスウイルスが再活性化して生じる顔面神経まひだ。
脳梗塞(こうそく)などが原因で起こる中枢性まひに対し、末梢(まっしょう)性まひと呼ばれる。

患者は10万人当たり約5人と推定され、男女差はなく、20代と50代に発症ピークがある。

主な症状は

(1)顔面まひ
(2)耳たぶや外耳道の帯状疱疹
(3)めまい、耳鳴り、難聴など。
※ただし、これら三つがそろった「完全型」は全体の約6割で、(2)(3)を伴わないもの、それぞれの症状が出るのに数日~2週間の時間のずれがあるもの、発疹がはっきりせず、赤く腫れるだけで外耳炎などと区別しにくいものも多い。
ほかに頭痛や耳の痛み、聴覚過敏、味覚異常、涙の減少などが現れることもある。

末梢性顔面神経まひでは、単純ヘルペスウイルスの関与が指摘される「ベルまひ」が最も多い。ベルまひは約7割が自然に治るとされるが、ラムゼイ・ハント症候群は約3割にとどまる。

「異常があれば、すぐに受診してください。
医師は慎重に診断しつつ、早期に適切な治療を始めるべきです」

と、いなば耳鼻咽喉(いんこう)科(横浜市)の稲葉鋭院長はいう。診断ではまず、脳梗塞などの病気がないことを確認する。
確定診断にはウイルスの抗体検査をするが、この病気が強く疑われる場合は、症状をみながら治療を先行させる。抗ウイルス薬でウイルス増殖を抑え、ステロイドで神経の炎症やむくみを取り除く。
発症3日以内に治療を始めれば、7割以上完治するという報告もある。神経を保護する薬や代謝をよくする薬、ビタミン剤も使う。

また、リハビリとして顔のマッサージやストレッチをする。口を動かすと目も動くなどの「共同運動」を防ぐため、意識して目と口を別々に動かすといった訓練をする。必要に応じ、顔面神経が入る管を切開してむくみを軽減させる手術や、上まぶたをつり上げるなどの形成手術をすることもある。

顔のまひは容貌(ようぼう)や印象に影響を与え、生活の質(QOL)に大きくかかわる。人と会うのを嫌って、外出を避けたり、仕事をやめてしまったりする人もいる。

「心のケアも重要で、周囲の理解と支えが欠かせません」と稲葉さんは話す。

(五十嵐道子)
(2010年5月2日付 朝日新聞朝刊から)

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